Column理想的なwork派遣社員の私には「仕事のやりがい」は初めから目の前には無かった。

派遣社員の私には「仕事のやりがい」は初めから目の前には無かった。

働く意味は自分で見出すしか。

日本企業で「熱意あふれる社員」はわずか5%

アメリカのギャラップ社という世界的な調査会社の調査によれば、
日本企業の従業員で「士気・熱意があふれる社員」の割合はわずか5%で、
調査対象国139カ国中132位と最低レベルにあるという記事を見つけました。

調査によれば「熱意あふれる社員」の割合は日本ではわずか5%でしたが、
アメリカは34%、
中国は17%、
韓国は12%
台湾は8%、とのことでした。

アメリカを除けば、お隣の韓国、台湾もそこまで「熱意あふれる社員」が多いという訳でもなさそうです。

新卒派遣社員として社会人をスタート

私はバブル経済崩壊後の不況下で就職活動をすることが怖くて、とくに明確な学ぶ意欲もなく、「入れそうな」学校に進学し、4年間の学生生活の間に、就職環境が改善されることを期待していましたが、そのような淡い期待はあっさりと打ち砕かれ、私が就職活動をしなければならなくなった時期は、後に「就職氷河期」と呼ばれる程の新卒就活生にとってはとても厳しい環境下でした。

私なりに必死で就職活動をがんばりましたが、30社以上から不採用通知を頂戴し、「内定」を得られないまま卒業を迎えることなり、已むなく派遣会社に登録をして、3月に学校を卒業、4月から不本意ながらも派遣社員=非正規社員として社会人をスタートすることになりました。

私は派遣された会社は、大手企業の事務部門でした。
派遣契約(派遣元企業との雇用契約)は6カ月間で、6カ月後の雇用=継続は確約されていませんでした。
仕事内容は、各部署、各営業所から本社にあがってくるデータを入力することでした。

はじめの1ヵ月程度は業務のルールを覚えることで大変でしたが、それも直ぐに慣れて、その後の仕事は「流れ作業」を繰り返すことが、私の仕事となりました。

私は2000年代前半、新卒者としての就職活動に失敗し、派遣社員=非正規社員として社会人をスタートしたことで、他の同世代があたり前のように経験した、入社式もなく、同期と呼べる新卒者もいませんでした。
私に仕事を教えてくれたのは、同じ派遣元から派遣されていた派遣社員の先輩でした。

派遣社員の先輩から教わったことは、私の与えられた「業務」に関することのみで、
一般的な新入社員が受けさせてもらえる新入社員研修などはありませんでした。

私の「業務」の中には電話対応は含まれていませんでしたので、
電話の取り方を覚えるのは、社会人をスタートさせて数年後のことになりました。
派遣社員の私には、とても狭い範囲の「業務」をミスなくこなすことが期待されていたのです。

「就職氷河期」真っ只中で「内定」を得ることの厳しさを身をもって経験した私は、
派遣社員であってもとにかく給与がもらえる仕事が4月からあったことで十分でした。
就職活動の際に行った自己分析で考えていた「やりたいこと」「やりたい仕事」等々は、
完全に頭の中から消えていました。

「派遣社員であっても学生時代と変わらず、同じアパートで一人暮らしを続けられ、
 給与は少なくとも、過度に期待されることなく働けることは十分幸せではないか」

そう思っていました。
私が派遣されていた会社には、私と同じく3月に学校を卒業して、正社員として雇用された新入社員もおりました。
私と同じ時期の学校卒業者でしたが、4月時点で私とは違う「役割」が課せられているのだと気がつきました。

会社から期待されるからこそ「熱意」が湧いてくるのでは

私はとても狭い範囲の「業務」を契約期間中ずっとこなすことを期待されていましたが、
正社員として雇用された新入社員は将来管理職になることを期待され、会社内の多様な業務をマネジメントできるように、幅広い知識の暗記と仕事上での「成果」を残すことを求められていることを、遠くから見ているだけでも理解できました。

私への会社からの教育は皆無でしたが、
正社員の新卒者には手厚く教育プログラムが提供されていました。
狭い範囲の「業務」しか期待していないのですから、「業務」をこなせる必要最低限のレクチャーしか提供しないのが普通なのでしょう。
一方、将来の管理署となる人材には、社会人1年目から高い角度で成長してもらう必要があったのでしょう。

私がいくら「業務」をこなすスピードが速くなったとしても、
ただ目の前の「業務」を何年こなしたとしても会社内でマネジメントする能力は見につくはずもありません。

会社から期待され、将来会社を引っ張る立場・ポジションになれる可能性がある正社員だからこそ、仕事に対する「熱意」が生まれるのだと思います。
私のようにスタート時点から特定の「業務」をこなすことだけを期待される派遣社員では、初めから会社や仕事に対する「熱意」という想いは抱き難いのだと思います。

もし私も正社員として社会人をスタートさせていたなら、
40代となった今でも「熱意」を持てていたのでしょうか…。

20年以上前から与えられた「業務」をこなすことが、会社での「仕事」だと実感している私は、
仕事に対する「熱意」の抱き方を知りません。
私は「熱意」があってもなくても、生活するためにしなければならないことが「仕事」だと思うのですが…。

むしろ仕事に「熱意」は必要なのでしょうか…、と考えてしまいます。

仕事を行う意味は、会社ではなく、自分で意味づけていくものではないでしょうか。
そして、働いて得た給与で、生活を意義深いものにしていくのも自分の考え一つではないでしょうか。


【文中の参考・引用文献】
・経済産業省「第2回未来人材会議 資料3事務局資料」(2022)

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プロフィール

学生時代に想い描いていた人生は、自分の社会的な存在価値を表してくれるような❝しっかりとした❞会社に就職して、20代で結婚し、30代で家族に恵まれ、子育てや家庭生活と仕事を両立させる、そのような「理想的」な生活。 しかしながら、現実は、「理想」とは程遠く、新卒者として臨んだ就職活動に❝失敗❞し、非正規社員として社会人をスタートし、学生時代からのパートナーと別れ、友人たちとも疎遠となり、20代後半から「孤立」し始め、30代はずっと「孤独」な生活を過ごすことに。 「孤独」の痛さや、孤独の中で毎日働く「虚しさ」を10年以上経験する。 40歳で「前向きに」生きることを決意し、カウンセラーの資格を活かし、自分と同じような「孤独」と「仕事」に不安と悩み、虚しさを抱えた方々に、ナラティブ・アプローチ(『語り』を通じた問題解決)を用いて、寄り添う活動を行っている。

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