私の「自己分析」で見出した「やりたいこと」「やりたい仕事」は
今から約20年前の就職氷河期の真っ只中に私は、新卒者として就職活動を行いました。
「自己分析」や業界研究や筆記試験対策など、一般的な就活対策は行い、就職活動本番に臨みました。
約30社程の選考プロセスにエントリーしましたが、すべて「不採用」=「お祈りメール」が届くだけでした。
私の時代の新卒者の就職活動時期は、大学3年次の10月に求人の広報活動が解禁され、年明け位から選考プロセスが本格化するようなスケジュールでした。
のちに「就職活動の長期化」が問題視されるようになり、「就職活動の後ろ倒し」が政府が主導する形で学校と企業(企業団体)との間で「申し合わせ」がなされまして、
現在の大学3年次の3月1日から求人の広報活動が解禁されるスケジュールに変わっていきました。
私の「自己分析」を振り返ってみますと、
私の将来の「やりたいこと」は、「クリエイティブな広告を社会に発信する」でした。
私の就職活動は新卒者にとってはかつてない厳しい環境下で行われました。
私が就職活動を行いました2000年代前半は、
1990年代前半の空前の好景気(バブル経済)から一転して、「不況」の波が日本国中を覆っていました。
好景気に沸いておりました1990年代前半に企業が抱えてしまっておりました「余剰」を、一斉に「リストラ」(本来の意味はリストラクチャリング、つまり「事業再構築」ですが、この時期の日本では「余剰削減」の意味合いで使われておりました)を進めた時期でもあります。
「リストラ」=余剰の削減は、「バブル期」に企業が蓄えた余剰な資産・設備の削減に留まることなく、「人」=従業員の削減も大規模に行われました。
好景気でありました1990年、
完全失業率は2.1%、有効求人倍率は1.40倍と、働く人にとってはとても恵まれた時代でした。
一転して不況下の2000年は、
完全失業率は4.7%、有効求人倍率は0.59倍と、
企業から「余剰」と見なされました人材は社外に否応なく出されてしまい、
次に転職しようにも求職者に対して求人数が絶対的に少なく、失業者となってしまった方も多く見受けられるなど、働く人にとってはとても厳しい時代となりました。
ちなみに、2000年の新卒者の求人倍率は0.99倍と、過去最低の求人倍率であり、
民間企業に就職を希望する大学生よりも、求人数の方が少ないという、新卒者として就職活動を行う学生にとっては❝どうすることもできない❞ほど、就職環境が厳しい時代でした。
このように1990年代半ばから2000年代半ばまでは、働く人、そして学校を卒業して新卒者として社会に出ようとしていた学生にとっては、とても暗鬱とした時代といえました。
「やいたいこと」「やりたい仕事」に「希望」を抱けていた学生時代
だからこそ私は、この暗鬱とした時代にあっても「クリエイティブな広告を社会に発信することで、少しでも社会を明るくしたい」と当時は❝まじめに❞思っていました。
真面目に「自己分析」をした結果たどり着いた私の「やりたいこと」でした。
「やりたいこと」が「広告」に関連する仕事でしたので、
「働き方」も多くの人たち関り、一つの目標=「クリエイティブな広告を社会に発信する」の達成に向けて、助け合い、励まし合いながら、一生懸命に取り組むイメージを持っていました。
学生時代は、自分が「やりたいこと」「やりたい仕事」であれば、夜遅くまで一生懸命働く❝覚悟❞があるほど、仕事に対して一つの❝希望❞を見ていました。
人生の多くの時間を費やす「仕事」なのだから、「やりたいこと」に全力で取り組みたい、とも思っていました。
私は、自分が価値ある、やりがいのある仕事と思ったことに対して一生懸命に挑戦したい、仕事に対して前向きな気持ちがあったのです。
ですが、就職活動では約30社の選考にエントリーして、
「内定」はゼロという本当に、本当に残念な結果となってしまい、
私は已むなく非正規社員の派遣社員として、社会人をスタートすることになったのです。
「自己分析」によって明らかにしました私の「やりたいこと」は、
「クリエイティブな広告を社会に発信する」でしたので、
「やりたいこと」に従って、私はエントリー企業の多くを「広告・出版業」に致しました。
学生時代は「自己分析」によって明らかにしました「やりたいこと」を「やる」ことが、幸せな職業人生につながる、としか考えられませんでした。
「やりたいこと」以外の業種や職種へのエントリーについては、真剣に取り組めませんでした。
「働く」のなら、自分の「やりたいこと」を。
この感覚に気持ちの大部分を占領されてしまっていたのでしょう。
ここにも「内定ゼロ」に陥ってしまった原因があったと思っています。
新卒就活生にとってとても厳しい就職氷河期において、
私が「やりたいこと」に決めて、選考プロセスにエントリーを続けていた「広告・出版業」は、厳しい時代の中でも最も「狭き門」の一つだったことにのちに気がつくのです。
2000年3月卒の大学への求人総数は407,768人に対して、
就職企業者は412,300人と、就職したい学生の方が就職活動を始める前から判明しており、
どうしても「内定」を得られない学生が出てしまうことは避けられない状況でした。
求人倍率は1倍を切る0.99倍となりました。
さらに2000年3月卒の業種別の求人状況を見返してみますと、
私が希望しておりました「広告・出版業」は、
「サービス・情報」に属しておりまして求人総数64,810人に対しまして、
「サービス・情報」に就職を希望しております新卒者は197,400人と、
132,590人分も希望者に対して、求人数がまったく足りていない状況でした。
「サービス・情報」の求人倍率は0.33倍と、
今になって「サービス・情報」業界の求人数に対する希望者数を勘案してみますと、
「自己分析」で明らかにした「やりたいこと」「やりたい仕事」は大事な想い、大事にしたい意志だと思いますが、「別な道」を模索することも必要だったのかもしれません。
ちなみに、2000年3月卒の「流通業」の状況は、
求人総数160,261人に対して、希望者は50,200人と、
「流通業」は求人倍率3.19倍と、多くの企業で希望者を超える人数の新卒者を求めておりました。
「製造業」も求人総数169,239人に対して希望者は140,000人、
求人倍率1.21倍と求人数が希望者を上回っていました。
仕事への「希望」は、「囚われ」だったかもしれない事実
私が就職活動を行っていた当時は、
「やりたいこと」に囚われ過ぎて、企業がより求めている「業種」はどこか、ということを考える広い視野を持てませんでした。
とにかく「広告・出版業」だけを見据えて、何社から不採用通知が届いたとしても、「志望業種」を変えることはできませんでした。
就職活動中に「一旦立ち止まって冷静に考えてみる」ことができませんでした。
結果として、卒業間近になっても正社員としての「内定」を得ることはできず、
非正規社員の派遣社員として働き始めることになったのです。
派遣社員として派遣された会社は、希望していた「広告・出版業」ではなく、
仕事もクリエイティブ…どころか、やりがいを感じることの少ないルーティーンワーク、
同期もおらず、フロア内の人たちは「仲間」でも「メンバー」でもなく、同じ空間を共有する人たちでした。
学生の頃は「仕事」や「意義深い人生」を「社会」と結びつけて考えられていた、のに…。
学生時代は本当に「やりたいこと」「やりたい仕事」に夢中になって挑戦したいと思っていたのです。
仕事に真剣に向き合うことも、人生の意義の一つだと思っていました。
私は新卒者として正社員になることを失敗してしまったことを分水嶺として、
人生における「仕事」の位置づけに迷うことになってしまいました。
私は働き始める前から「仕事は生活のため」とか「仕事は給与を得るため」だけのものとは考えてはおりませんでした。
確かに、かつては、
「働くこと」や「仕事」に対して「希望」を持っていたのです。
空前の好景気に日本国中が湧いていた1990年代前半、そこから「バブル経済」崩壊後に訪れた不況と「リストラ」。
そのような暗鬱とした時代だからこそ、
私が「クリエイティブな広告を発信することを通じて、少しでも社会を明るくすることに寄与したい」と真剣に考え、仕事や働くことに「希望」を頂いていた学生時代。
学生時代は、仕事や働くことを「社会」と結びつけて考えていたことに「ハッと」させられます。
「暗鬱とした時代だからこそ、私の仕事で少しでも『社会』を明るくしたい」、
そう考えていたのです。
確かに学生時代は、働く意義、自分の人生の意義を「社会を明るくする」仕事に抱いていたようです。
40代となった私よりも、
20代の私の方が純粋で、真面目で、意義深い「人生」の捉え方をしていたようです。
一人アパートでの単調な生活を繰り返す日々の中で、
20代の頃の「理想」をすっかり失ってしまっていたようです。
さて、私は新卒者として就職活動を経験してから早20年が余りが経過しようとしています。
20代半ばから40代までの月日はあっという間に過ぎ去り、気がつけば40代になっておりました。
確かに学生時代は「働くこと」や「仕事」に明確な「希望」を見出せていたのです。
私は40代となって今からでも、自分なりに「働くこと」への「希望」と「意義」を見つけたいと思っています。
30代は自分の「不遇」ばかりを悔やむ日々を過ごしてしまいましたが、
今は「これからでも遅くない」と前を向くように必死に気持ちを奮い立たせています。
40代で独身の私は、
「必死で」気持ちを奮い立たせなければ、
1秒後にでも暗鬱な気持ちに逆戻りしてしまいます。
新卒者としての就職活動には失敗しましたが、
今考えれば、その失敗が逆に、長い人生で見た時に、むしろ「良かった」、
と振り返ることができる日がくることを夢見ながら、模索し続けたいと思います。
【文中の参考・引用文献】
・独立行政法人労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」
・株式会社リクルートリサーチ「第16回 2000年大卒求人倍率調査」(1999)