Column理想的なlife「孤立死」年間3万人に、独身一人暮らしの私が思うこと~今の唯一の人間関係は「仕事」を通じたものですが、「仕事」を通じた人間関係はとても脆くて儚いものです。

「孤立死」年間3万人に、独身一人暮らしの私が思うこと~今の唯一の人間関係は「仕事」を通じたものですが、「仕事」を通じた人間関係はとても脆くて儚いものです。

生きることと、働くということは密接に関係しているようです。

一人暮らしが増えることで、「孤独死」をされる方も増える見込みも

少し前の調査になりますが、一人暮らしで、周りの方々に知られることなく亡くなられた、
いわゆる「孤立死」(孤独死)された方は、年間3万人程おられるようです。

そして「孤立死」の問題を調査されましたチームによりますと、
孤立死が増えた背景には、社会的に「孤立」してしまっている方が多くなっていることが関係している、ようです。
社会的な孤立が増加している一つの現れとしては、一人暮らし=単身世帯が拡大している点に見られるそうです。
そして、2030年には日本の3世帯に1世帯が、単身世帯=一人暮らしになる予測のようです。

不幸にも「孤立死」を迎えてしまわれる方は、
一人暮らしで、かつ日頃から家族や友人、地域の方々、趣味をともにする方々と❝繋がり❞が希薄な方が、
独り自宅で亡くなられたことを気がつかれることなく、数日が経過してしまい、「孤立死」に数えられることが多いようです。

また東京都の調べによりますと、
2020年に一人暮らしで自宅で亡くなられたことを発見された方(=孤立死)は、
6,096人だったようです。
その内、女性は1,890人、男性は4,206人と、男性の方が多くの孤立死をされているようです。

このことは、男性の方が女性よりも未婚率が高いことが要因に一つになっていると思われます。

一人暮らしで、自宅で亡くなられたことを発見された方を孤立死と定義しますと、
ご高齢の方を想像してしまいますが、
実際には65歳以下の方でも孤立死を迎えてしまうケースもあるようです。

2020年に孤立死とされた6,096人の内、
64歳以下だったケースは1,889人と30%を占めておりました。

ちなみに、40代で、一人暮らしで、自宅で亡くなられ孤立死とされたのは、
347人で、全体の5.6%だったようです。
347人中、女性は76人で、男性は271人とのことです。

「孤独死」と私の今の人との❝繋がり❞について

ふと、一人暮らしで、日頃から、家族や友人、地域の方々との関係が希薄…、
私の今の生活ととても似ている気がします。

とりあえず、今は月曜日から金曜日までは働いておりますので、
さすがに朝会社に出勤しなければ、何かしらの連絡手段で私の「消息」を探ってくれるとは思います。

なるほど、
私がわずかに「人」と接点を持てているのは、「仕事」があるからだったのです。
もし今の私から仕事を取ってしまえば、周囲のどなたとも「接点」がなくなってしまうことに気づかされます。

今の私の残されている微かな「人」との接点となっております「仕事」ですが、
この私と「人」とをかろうじて繋いでおります「紐帯」は、
とても儚く、もろいものであることも私は知っています。

私は社会人のスタートを非正規社員の派遣社員として始め、
社会人となってから、20年程経過した今でも「限定社員」という非正規社員として働いています。
「限定社員」となった現在は、60歳の定年まで雇用契約があることにはなりましたが、
「派遣社員」だった頃は、6カ月間しか雇用契約が有効ではありませんでした。

派遣社員だった頃の私は、
「いつまでも同じ会社で働くことができる」という感覚はありませんでした。
結果的に、派遣契約は6カ月間でしたが、派遣契約の「更新」が幾度となくなされたため、同じ会社で働くことにはなりましたが、契約の「更新」は「確約」されている訳ではありませんでした。

6カ月後、「この」会社で働けているかどうかが不明な労働環境におきましては、
派遣先企業(実際に労働する職場)での人間関係も「それなり」になってしまいます。

私としては(おそらく派遣先企業の社員の方も)、
「6カ月後にいなくなるかもしれない人」と積極的に深い人間関係を築こうとは思えませんでした。
6カ月が過ぎて派遣契約が更新されませんでしたら、
派遣契約の最終日に挨拶を交わした後は、お互いに、もうその後の人生で関わることのない人になるのですから。

「仕事」を紐帯とした人間関係の危うさ

「仕事」を通じた人間関係は、
労働をしているその瞬間は成立しますが、
労働が終わってしまえば、
その次の瞬間から、人間関係を成立させる「理由」を失い、他人になることを、
私は派遣社員の頃からずっと経験してきました。

「仕事」を通じた人間関係の脆さとはかなさをずっと経験してきたのです。

だからこそ、
独身で、一人暮らしで、人との繋がりがきわめて希薄な私が、
非正規社員であるからこそ❝繋がっている❞人間関係しかない現状に、
大きな不安を感じるのです。

雇用契約が60歳まで約束されているとしても、
60歳になれば自然に、
現在の私の唯一の人間関係であります「仕事」を通じた❝繋がり❞からも「切り離されて」しまいます。

そして、必ず60歳は訪れます。
私の唯一の人間関係の紐帯であります「仕事」を必ず失う時は訪れます。

生きることと、働くことは密接に関係しています。

独身であること、
親とも友だちとも疎遠であること、
仕事には生きがいを感じられないこと、
そんな仕事でも唯一の人間関係の紐帯となっていること、
老後の資金はこのままでは足りないこと…。

生きることと、働くことは、密接な関りを持っています。
仕事そのものには生きがいも希望も見出せませんが、
それでも、今の私の人間関係を保つ唯一の「理由」となっている事実があります。

いっさい前向きな感情を抱くことができなかった「仕事」が、
私の唯一の「居場所」を作ってくれているという現実。

これから人生を意義深く愉しむためには、
「仕事」についてもっと調べながら、
「仕事」以外の「生活」についてももっと考える必要がありそうです。

「仕事」を通じた人間関係は、
「雇用契約」の上に成立しているに過ぎないもので、
誰しもが「契約」が切れた時点で、
その人間関係も切れることからは逃れられないものですから。

人間関係の「紐帯」としての「仕事」は、
会社と個人の「契約」の上に成立していることから、
(本当は)脆くはかないものだと思いますので。


【文中の参考・引用文献】
・「長寿時代の孤立予防に関する総合研究~孤立死3万人時代を迎えて」株式会社ニッセイ基礎研究所(2014)
・「東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和2年)」東京都福祉保健局東京都監察医務院(2021)

Author's Profile

プロフィール

学生時代に想い描いていた人生は、自分の社会的な存在価値を表してくれるような❝しっかりとした❞会社に就職して、20代で結婚し、30代で家族に恵まれ、子育てや家庭生活と仕事を両立させる、そのような「理想的」な生活。 しかしながら、現実は、「理想」とは程遠く、新卒者として臨んだ就職活動に❝失敗❞し、非正規社員として社会人をスタートし、学生時代からのパートナーと別れ、友人たちとも疎遠となり、20代後半から「孤立」し始め、30代はずっと「孤独」な生活を過ごすことに。 「孤独」の痛さや、孤独の中で毎日働く「虚しさ」を10年以上経験する。 40歳で「前向きに」生きることを決意し、カウンセラーの資格を活かし、自分と同じような「孤独」と「仕事」に不安と悩み、虚しさを抱えた方々に、ナラティブ・アプローチ(『語り』を通じた問題解決)を用いて、寄り添う活動を行っている。

よく読まれているColumn

ColumnTag