「老後の資金2,000万円必要問題」の中身を見てみますと
少し前に「老後の資金は2,000万円必要」ということが話題になりました。
この話題の発端は、金融庁が公表した報告書だとか。
「老後の資金は2,000万円必要」がクローズアップされることとなった報告書での指摘は、
「(2)で述べた収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、
20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要になる。」
の部分のようです。
この(2)の部分をさらに見てみますと、
夫が65歳以上で、妻が60歳以上で、仕事をしていない夫婦は、
平均すると、
[収入]主に年金給付などで月209,198円、もらえるの対して、
[支出]主に生活費などで月263,718円、使うので、
毎月54,520円足りなくなりますので、
20年間(12か月×20年×54,520円=13,084,800円)ですと約1,300万円必要で、
30年間(12か月×30年×54,520円=19,627,200円)ですと約2,000万円必要となります、
という説明になるようです。
ここから「老後の資金は2,000万円」が必要になるので大変!、というイメージが先行したようですが、「2,000万円が必要」と指摘された同じ報告書では、
65歳時点の平均的な金融資産の金額も掲載されておりまして、
夫婦世帯では2,252万円、
単身男性では1,552万円、
単身女性では1,506万円、となっておりまして、
「平均的」な65歳は老後の資金にまったく不安がないように私には思えます。
私事として老後の資金問題を考えてみますと
さて、では私の場合を考えてみたいと思います。
22歳で大学を卒業と同時に非正規雇用であります派遣社員として、時給1,200円で働き始めました。
時給1,200円で1日8時間、週5日間働きますと、月収は210,000円程になりました。
手取り額にしますと180,000円くらいだったと思います。
私は学生時代に借りておりました家賃60,000円のアパートで、社会人になってもそのまま一人暮らしを続けることにしました。
派遣社員で得られる収入は決まっておりましたので、学生時代よりも「良い物件」に引っ越すことは諦めました。
当時は、正社員として社会人になることもできず、かといって実家に戻ることも躊躇われて、とにかく今と(学生時代と)変わらない生活環境で働きながら、将来のことを少しづつ考えていこう、と思っておりました。
一人暮らしに必要な食費、光熱費、通信費などは私はあまり消費しない方ですので、60,000円もあれば足りました。
20代の頃は、交際費や洋服代も必要でしたので、手取り額約180,000円の内、貯蓄にまわせる金額はほとんど残りませんでした。
30代になり、ほぼひきもり生活をし始めてからは、交際費や洋服代の支出がほぼゼロになったこともあり、収入=賃金は増えることはありませんでしたが、20代に比べますと僅かながら支出は減少しました。
40代の現在は、人生を意義深く、愉しむために、すっかり重くなりました腰を何とか上げるようにして外出するようになりましたが、私一人の❝お出かけ❞ですので支出はきわめて質素なものです。
それでも新卒者の頃から1年ごとに「昇給」する働き方ではなかった私は、20年程働いた現在でも、ほとんど賃金水準は変わっていません(賃金はほとんど上がっていません)。
そのような訳で、毎月給与として入ってくる額と、毎月きまって支出する額が、約20年間ほとんど変化しておりませんので、「貯蓄」も20年程働いてもあまり貯められていません。
おそらくこのままの仕事で、同じような賃金水準で、65歳まで「働かせて」頂けるのであれば、65歳までは、一人で今と同じような生活水準を維持できそうです。
(私が65歳まで健康であれば…、という大きな不安要素もありますが…。)
65歳以降の生活費を支えるのは①貯蓄と②年金、私はどちらも心許ない現実
ここで問題となってきますが、「老後の資金は2,000万円問題」です。
さきほど見た通り、2,000万円が必要の根拠となった生活モデルは、
夫婦で毎月の支出額が263,718円で、30年間生活した場合という条件が付くものでした。
独身で一人暮らしの私の生活水準を65歳以降も変えなければ、毎月26万円も必要ありません。
14〜15万円あれば普通の生活ができます。
14〜15万円があれば65歳以降も生活ができるのですが、
その頃には私は会社を退職し、無職で一人暮らしになっていることでしょう。
65歳以降の生活を支えるのは、
①貯蓄と、
②年金となるのですが、
私の場合は問題は①貯蓄にもあり、②年金にもあります。
①貯蓄は、このまま65歳まで働いたとしても貯められて300〜500万円程度でしょうか…。
平均的な65歳の単身者が1,500万円ほどの貯蓄からしますと、5分の1から3分の1程度しかありません。
そして派遣社員、そして現在は限定社員の私には仮に65歳まで働いたとしても、退職金が1円も支給されません。
もともと退職金は「ない」という条件を提示された上で、私は会社と契約していますので、これは本当に「仕方がないこと」と受け止めています。
退職金が「ない」ことが確定しております私の老後の資金は、65歳まで働いて得た給与から蓄えていくしかありません。
しかしながら、その蓄えの計画も今と同じ仕事、同じ給与を前提にしますと、300〜500万円ほどしか貯蓄が見込めません。
②年金は、このまま65歳まで働いたとして、毎月もらえる額は9万円程度になりそうです…。
毎月の掛金が少ないものですから、これも「仕方ない」ものと理解しております。
65歳以降も今と同じ生活をするには月5万円不足する計算に、貯蓄で賄えるのも71歳まで。その後は…。
私の65歳以降の収支は、
[収入]は主に年金として9万円、
[支出]は今と同じ生活をするとして14万円、
報告書のモデルケースとは収支の額は違いますが、
毎月5万円程足りなくなる、はぴったりとあてはまってしまっております。
私の65歳時点の貯蓄が仮に400万円だとしますと、
毎月5万円の赤字=12ヶ月×5万円=1年間で60万円が貯蓄から支出されます。
年間60万円の赤字が続きますと6年6ヶ月で貯蓄が尽きてしまう計算です。
私の65歳以降の老後の生活は、71歳6ヶ月で今と同じ水準の生活ができなくなる見込みとなります。
71歳と6ヶ月以降は、年金の9万円で賄える生活を考えなければならなそうです。
退職金がないことも、年金の額も、すべて私の人生なのです。
このような現実を踏まえ、それでも人生を意義深く、いかに愉しむかが、人生の楽しいところなのかもしれません。
【文中の参考・引用文献】
・「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」(2019)