Column理想的なwork「石の上にも3年」=「入社したら3年は働くべき」と昔はいわれましたが…。私は主体的に動くべきでした。

「石の上にも3年」=「入社したら3年は働くべき」と昔はいわれましたが…。私は主体的に動くべきでした。

ずっと同じ場所に❝座って❞いることは楽ですが、気がつけば「動けなく」なっていることも。

「石の上にも3年」の教えと日本の雇用慣行との関係

私が就職活動をしていた頃は「石の上にも3年」、つまり「一度入社したら、その会社で3年は働くべき」とよく聞かされておりました。

「入社したら、3年は働くべき」との教えは、
日本の特徴的な雇用慣行であります、学校を卒業して直ぐに新卒者として雇用し、まずは簡単な仕事から担わせ、並行して人材教育プログラムを受けさせて、徐々に難しい仕事に挑戦させていくことで、会社内のさまざまな部署のさまざまな仕事を担うことのできる「総合職」を育成するモデルから、導き出されたものと思われます。

日本の特徴的な雇用慣行も随分と変化してきておりますが、私が就職活動をしておりました2000年代前半は、新卒者の一括採用、長期勤続を前提としました業務分担と人材教育プログラムは❝現役❞の人事制度として、多くの企業が採り入れておりました。

新卒者とした採用した人材は、後々さまざまな業務に対応することのできる「総合職」として育成することを念頭に置きまして、入社当初は、比較的簡単な業務から担わせることが多くの企業で行われておりました。
(むかし一時的に正社員の新入社員が派遣社員と同じ仕事を担っていたことで、「同じ仕事」をしているのに正規社員と非正規社員の賃金の差がある、として揉めておりましたが、正社員の新入社員が簡単な業務を担うのは、後に「総合職」に育てるヴィジョンがあってこその措置だったと思われます。)

正社員であっても新入社員は比較的簡単な仕事から与えられる労働慣行があったからこそ、
「入社したら、3年」は働かないと、簡単な仕事の職務経験しか得られず、
転職する際にも、「前職での職務経歴」をアピールでないことと、
長期勤続を前提とした正社員の採用では「直ぐに辞める」可能性が高いとみなされる人材を忌避する傾向があったことから、
「入社したら、3年は働くべき」という教えが、リアリティをもって受け入れられていたのかもしれません。

「石の上にも3年」の教えの範囲外だった派遣社員の私

そこにきて私のケースですが、
私は就職活動に失敗して、非正規社員である派遣社員として、学校を卒業してから直ぐに働き始めました。
新卒の派遣社員は、厳密には「新卒者」とは見なされませんでした。

学校卒業してまもなくの4月から派遣されて、同じフロアには、私と同じ派遣会社から派遣されておりました❝先輩❞派遣社員がおりました。
私は「新卒者」として歓迎されることなく、ただ派遣社員として仕事をしにきた労働者の一人として迎い入れられました。

派遣社員として社会人をスタートさせました私には、
同期もいなければ、新入社員歓迎会もありませんでした。

派遣社員の私は、(当然ですが)派遣先企業から長期的に働いて欲しい、ということは期待されておらず、派遣契約期間でありました6カ月間しっかりと働くことを期待されておりました。

派遣契約期間の6カ月が満了した後に、契約が「更新」されるかどうかは、派遣先企業が決めることで、私には「契約更新」に関して口を挟む余地はありませんでした。

私が新卒者から選ばざるを得なかった「働き方」であります派遣社員は、
長期勤続を期待されております正社員とは大きく異なり、
6カ月間という短期間の労働を期待されております。

派遣先企業が私と(正確には派遣元企業と)6カ月間という短い期間の労働契約を結ぶということは、
「直ぐに覚えられ、直ぐに戦力となりそうな仕事のみをして欲しい」ということなのでしょう。

実際、私は学校を卒業して直ぐに派遣社員として働き出しましたが、
与えられた仕事は短期間で❝こなせる❞ようになりました。
与えられた仕事を❝こなせる❞ようになってからは、ずっとルーティーンワークを繰り返す感覚が続きました。

直ぐに❝こなせる❞仕事であっても、派遣社員の私には、派遣先企業の担当者が指示された仕事を淡々と❝こなす❞以外にありませんでした。

4月から派遣契約がスタートし、5カ月が経過しようとしていた8月に、
派遣元企業の担当者がこられ「9月末日に契約が満了しますが、10月1日から再度6カ月間の『契約更新』を打診されております。どうしますか」とはじめて「契約更新」について告げられ、私はそのまま派遣契約を更新し、そのまま派遣社員として働き続けることを選択したのです。

10月1日から「新しい」派遣契約となりましたが、
この「新しい」派遣契約も6カ月間という短期間の契約です。
私に期待されていることも何も変わることなく、
「直ぐに覚えられ、直ぐに戦力となりそうな仕事のみをして欲しい」でした。

誰でも、直ぐに覚えられる仕事をミスなく淡々とこなす、
派遣契約は6カ月間で、「更新」によって次の6カ月間も同じ場所で働くことができるようになる、
このような「働き方」がこの後10数年以上もずっと続くとは、1年目には想像できませんでした。

石の上に約20年間、そろそろ自ら動き出す時期かもしれません。

派遣社員の私には、仕事=業務を「選択」することはできませんでした。
与えられた仕事をこなす、これが私に求められる働き方でした。

派遣契約を幾度となく「更新」を繰り返している内に、気がつけば30代。
気づいた時には、
「簡単な仕事を淡々とこなすことしかできない30代」となっておりました。

気づいた時には、
もう正社員として転職することはムリ、と悟りました。

「石の上にも3年」=「入社したら3年は働くべき」、
確かにむかしはこの教えに一定の説得力はあったのかもしれません。

ですが、私のような非正規社員は「石の上にも3年」と悠長に座っていないで、
主体的に「動く」べきだったと思っています。

「動く」ことは転職することだけではなく、
仕事や働く会社を「選ぶ」ために、汎用的に求められるスキルや知識を、自分から「学ぶ」ことも必要だったと思います。

「石の上にも3年」、
この教えに従った方が良い人もいれば、
私のようにこの教えがあてはまらない人もいるようです。

40代となった私ですが、これからは少しづつ主体的に「動いて」みたいと思っています。
過ぎ去った時間は元には戻りません。
では、これからどうするか、を考え、動きたいと思います。

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プロフィール

学生時代に想い描いていた人生は、自分の社会的な存在価値を表してくれるような❝しっかりとした❞会社に就職して、20代で結婚し、30代で家族に恵まれ、子育てや家庭生活と仕事を両立させる、そのような「理想的」な生活。 しかしながら、現実は、「理想」とは程遠く、新卒者として臨んだ就職活動に❝失敗❞し、非正規社員として社会人をスタートし、学生時代からのパートナーと別れ、友人たちとも疎遠となり、20代後半から「孤立」し始め、30代はずっと「孤独」な生活を過ごすことに。 「孤独」の痛さや、孤独の中で毎日働く「虚しさ」を10年以上経験する。 40歳で「前向きに」生きることを決意し、カウンセラーの資格を活かし、自分と同じような「孤独」と「仕事」に不安と悩み、虚しさを抱えた方々に、ナラティブ・アプローチ(『語り』を通じた問題解決)を用いて、寄り添う活動を行っている。

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