Column理想的なwork同じ仕事をしていては、何十年経っても賃金が上がらない世界(派遣・非正規=職務給)で私は働いてきました。

同じ仕事をしていては、何十年経っても賃金が上がらない世界(派遣・非正規=職務給)で私は働いてきました。

もし「給与」を上げたいのであれば、「仕事そのもの」を変える必要があるのが「職務給」の世界なのでは。

新卒派遣社員としての働き方、❝先輩❞との希薄な人間関係

春先からモノの値上げが相次いでいます。
生活必需品であります食料品の値上げが私にとっては影響が大きいところです。
1ヵ月働いてもらえる給与は変わらないのですが、出ていくお金が増えるのは困りものです。

私は、ちょうど後に就職氷河期と呼ばれることとなる2000年代前半に新卒者として就職活動を行い、正社員としての内定を得られないまま卒業時期を迎えてしまい、已むなく派遣社員として社会人をスタートしました。

派遣社員は6カ月の労働契約で、6カ月後に労働契約が更新されるかは派遣先企業に完全に委ねられていました。
私が毎日通っていた会社(=派遣先企業)は、私の雇用主ではありません。
私が労働契約を結んでいた派遣元企業は別のオフィスにあり、私は派遣元企業から派遣された社員であり、通っていた会社の社員ではありませんでした。

毎日通っていた会社・オフィスの中には多くの働く人がおりましましたが、その中には、
通っていた会社の正社員、
通っていた会社に雇用されているパート職員(非正規社員)、
派遣元から派遣され、派遣先の会社内で働いている派遣社員(非正規社員)、
がおりました。

私は最も職場内の「仲間意識」から遠い、
派遣社員で、
通っていた会社の正社員からすれば、
通っていた会社から直接雇用されてすらいない非正規社員でした。

私の他にも同じ派遣会社から派遣されていました方がおられましたが、
私は学校を卒業したてで社会人としての基礎教育をまったく施されていない❝手間のかかる❞派遣社員でしたので、面倒なことをしたくない❝先輩❞の派遣社員からはあまり相手にもされませんでした。

確かに、新卒者として正社員で入社した人は、何十年と同じ会社で一緒に働く「仲間」になる訳ですから、伴に学び合ったり、伴に励まし合ったりする必然性があるのでしょう。

一方、お互い6カ月契約で、次の契約更新の際には、どちらかが会社を去ることもありえる❝同僚❞に対して、真面目に仕事を教えようとはしないものです。
社会人1年目=派遣社員1年目には、隣の席の同じ派遣社員の❝先輩❞は、特別冷たい人と思ってしまっていましたが、その後、私自身が10数年以上も派遣社員として同じ会社=同じ場所で働くこととなって、当時の❝先輩❞の気持ちが良く分かりました。

「この子もどうせ数カ月でいなくなのだから、イチから教えるは面倒」

正社員のように何十年も同じ会社で働き、その会社の成長が、自分の生活のためになると思えるからこそ、同僚や先輩、後輩と「仲間意識」が芽生えるのだと思います。

派遣社員に与えられる「仕事」がルーティーンワークになってしまう理由

私のように6カ月を一つの区切りとして、同じ会社で働き続けられるか、それとも、また別の会社に派遣されるか分からない、不安定な働き方では、仕事を教える方も、仕事を教えられる私も、どこか「他人事」になってしまうように思います。

就職氷河期のさ中の就職活動の失敗から、派遣社員として6カ月契約で働き始め、
契約の「更新」、「更新」、「更新」…を繰り返し、
同じビル内の違う部署に派遣されては、元の部署に戻ったりと、
まったく自分の意志というものがないままに10数年が経過していました。

6カ月契約が満了した後の「更新」が「確約」されていない労働契約の範囲内の仕事は、
基本的は誰にでもできるルーティーンワークです。
派遣法の規定により、正社員と同じ仕事を与えることは法に抵触する恐れもあるからです。

気がつけば、新卒者の派遣社員としてスタートした時と、ほぼ同じような「仕事」を10数年以上こなしていました。
派遣法の縛りにより正社員と同じような「仕事」をさせることはできず、そのことによっても派遣社員は他社でも活かせるような職務経験を積ませてもらうことも難しく、教育訓練もほとんど受けさせてもらえませんでした。
私は、同じ仕事をしていては、何十年経っても賃金が上がらない世界(派遣社員)で働いてきました。

派遣社員=非正規社員・「職務給」の自動的には上がらない給与

ちなみに、厚生労働省の調べによりますと、
派遣社員の平均的な1時間当たりの賃金(一般労働者派遣事業)は、
17年前の2005年は1,315円、
それから15年経過した、2020年は1,412円と、
ほとんど賃金水準が変わっていません。
派遣社員の1時間当たりの賃金はほとんど上がっていないのです。

派遣社員として10数年以上働いている私としては、
学校を卒業したての頃と「同じような仕事」をしているのだから、
給与は「自動的」には上がらない、のではと思うのですが。

私は2000年代前半に学校を卒業して直ぐに派遣社員として時給約1,200円で働き始め、
その当時と「同じような仕事」を40代となった今でも続けており、
2000年代前半と「同じような給与」で40代の今も働いています。

私はあまり給与の使い道がありませんので、給与についてこだわりはありませんが、
もし給与を上げたいと思うのであれば、
より難しい職務経験と、知識とスキルを身につけ、
「仕事」そのものの難易度を変えていくことが、
「職務給」の世界で生きている私のような人には必要なのかもしれません。

とはいえ、
1年先の雇用がどうなっているのかを自分では見通せず、
自ら「仕事」を選ぶことも難しく、
とても流動的で不安定な雇用・働き方の中で、
独学で、しっかりとした知識やスキルを身につけるための学びを継続できる❝強い❞人ばかりではないことも、❝当事者❞の私にはよく理解できます。


【文中の参考・引用文献】
・厚生労働省「労働者派遣事業の令和2年度事業報告の集計結果」(2022年)
・厚生労働省「労働者派遣事業の平成17年度事業報告の集計結果」(2006年)

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プロフィール

学生時代に想い描いていた人生は、自分の社会的な存在価値を表してくれるような❝しっかりとした❞会社に就職して、20代で結婚し、30代で家族に恵まれ、子育てや家庭生活と仕事を両立させる、そのような「理想的」な生活。 しかしながら、現実は、「理想」とは程遠く、新卒者として臨んだ就職活動に❝失敗❞し、非正規社員として社会人をスタートし、学生時代からのパートナーと別れ、友人たちとも疎遠となり、20代後半から「孤立」し始め、30代はずっと「孤独」な生活を過ごすことに。 「孤独」の痛さや、孤独の中で毎日働く「虚しさ」を10年以上経験する。 40歳で「前向きに」生きることを決意し、カウンセラーの資格を活かし、自分と同じような「孤独」と「仕事」に不安と悩み、虚しさを抱えた方々に、ナラティブ・アプローチ(『語り』を通じた問題解決)を用いて、寄り添う活動を行っている。

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