Column理想的なwork就職氷河期世代の正社員を30万人増やす計画も3万人の増加にとどまった、というニュースに❝当事者❞の私が思うこと

就職氷河期世代の正社員を30万人増やす計画も3万人の増加にとどまった、というニュースに❝当事者❞の私が思うこと

就職氷河期の当事者としては「もっと早く言って欲しかった」という思いが。

2019年に約20年前の就職氷河期世代に支援の手を差し伸べようとしている

先日、政府が就職氷河期世代の正社員を2020年度から2022年度の3年間で30万人増やす目標を掲げておりましたが、2021年度までに3万人の増加にとどまった、というニュースが目に留まりました。
2019年度の就職氷河期世代の正社員数が916万人だったところ、2021年にはプラス3万人の919万人になったそうです。
3年計画の最終年度となる2022年度末に目標を達成するには、残り半年で27万人の正社員を増やす必要があり、目標の達成は難しくなったようです。

私も大学の卒業を控え、就職活動を行わなければならなかった年が❝たまたま❞「就職氷河期」真っ只中でした。
厳しい、厳しいと言われていました大学新卒者の就職活動でしたので、自分なりにしっかりと対策して就職活動「本番」に臨みましたが、結果的には卒業までには正社員として「内定」を得られずに、已むなく派遣会社に登録し、6カ月契約の非正規社員=派遣社員として社会人をスタートさせました。

支援対象と見なされている就職氷河期世代は約100万人

ニュースで取り上げられていました政府の就職氷河期世代への支援策の資料を見てみますと、就職氷河期の未就職卒業者数が記されていました。
私も就職活動を経験した2000年代前半の大学等に通っていて未就職のまま卒業した人数は、
2000年は8万8,000人、
2001年は8万1,000人、
2002年は7万5,000人、
2003年は6万9,000人、
2004年は5万6,000人だったそうです。

ちなみに、2019年に未就職のまま卒業した人数は1万8,000人だったことからも、就職氷河期と呼ばれている世代の就職が厳しかったことが分かります。

次に、政府が支援しようとしている就職氷河期世代を見てみますと、
①正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く人(少なくとも約50万人)、
②就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者、
③社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする人(②+③約40万人)、
と定義されていて、支援対象者は約100万人と見込まれているようです。

そして、2020年度から3年間の支援プログラムで「現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規雇用については、30万人増やすことを目指す」ことになったようです。

不本意ながら非正規社員として社会人をスタートさせた❝当事者❞の私

私は大学を卒業してすぐ非正規雇用の派遣社員として働き出しました。
とても不本意でした。
そして、6カ月契約を何度も派遣先を転々としながら、更新し続け、気がつけば15年程経過しており、その間派遣法が幾度か改正され雇用主にとって年々厳しくなっていったこともあって、私は派遣先企業の「直接雇用」に変わりました。

派遣社員と派遣先企業の直接雇用との違いは、6カ月ごとに更新されていた雇用契約が、「期間の定めのない雇用」に変わり、正社員と同じく60歳までは雇用が継続される契約に変わったことです。
ただし、私が受け取る給与の水準はほとんど変わりませんでした。
仕事内容も派遣社員時代とまったく変わりませんでした。

そう、私は派遣先企業の直接雇用に変わっただけで、いわゆる正社員になった訳ではないのです。
今は雇用主となった勤務先会社には数パターンの「雇用契約」と「就業規則」があり、私は新卒者として入社し正社員となった人向けの「雇用契約」ではなく、❝限定的な仕事❞を行う人向けの「限定社員」の「雇用契約」を結んだ社員となったのです。

基本的に私の雇用契約には、定期的な昇給もボーナスも用意されていません。
この会社で給与を含む処遇を向上させるには、正社員向けの雇用契約に変更する必要があるのですが、正社員への転換試験のハードルが(私には)高過ぎるために、正社員への転換の実現はかなり難しく、おそらくこのまま60歳までは働き続けることはできても、給与が上がることは望みが薄いといえます。

今から正社員として働けるかが問題かと

実際に就職氷河期世代で「不本意ながら」非正規社員を15年以上経験した私としては、いくら政府が支援すると掲げたとしても、いまさら正社員として働く能力もモチベーションも体力も足りない気がしています。

派遣社員として社会人をスタートした私は、はじめからとても限定された「職務」しか与えられず、短期間で覚えられるようなルーティンワークをひたすら繰り返す日々では、とても転職して、職場環境が異なる他社で、正社員として働ける能力を身につけることはできませんでした。

また❝仕方なく❞続けていた派遣社員としての働き方では、「仕事のおもしろさ」や「目標を達成する喜び」を得られることはなく、30歳となった頃には、「もっとおもしろい仕事がしたい」といった欲求はなくなってしまっていました。
仕事は決められた範囲内のタスクを、決められた時間内に、管理者の指示の下、ミスなくこなすことだと悟りはじめるようになっていきました。
今から「自分で考える」ような仕事はできそうにありません。

40代となり、明らかな体力の衰えを感じるようにもなってきました。
もともとアクティブな方ではありませんでしたが、数年前に比べて、体が重く感じる日が多くなってきました。
「正社員にしますので、これまで以上に仕事に打ち込んで下さい!」と言われても自分の体力の衰えを前にしては、暗鬱な気持ちになってしまいそうです。

政府が掲げられた就職氷河期世代の正規社員を30万人増やす計画が3万人の増加にとどまったニュースを見て、当事者であった私なりにこれまでのキャリアを振り返ってみましたが、「もっと早く言って欲しかったな」という思いが残りました。

40代となった私には、これから正社員となる能力も、モチベーションも、体力も足りないと「自己分析」できます。

それでも私は、理想的な生活を送るために、「理想的な仕事」についても考えていきたいと思います。
就職氷河期に新卒者として就職活動をしなければならなかった不遇は、もうすでに時間を戻すことのできない現実とともに昇華させました。
独身のまま40代となり、限定的な仕事をこなす毎日と孤独な休日もすべて自分の人生を受け止め、それでも意義深く幸せな生活を模索し続けます。


【文中の参考・引用文献】
・内閣官房就職氷河期世代支援推進室「就職氷河期世代の就業等の動向」(2022)
・内閣官房就職氷河期世代支援推進室「就職氷河期世代の推進に向けた全国プラットフォーム」(2019)

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プロフィール

学生時代に想い描いていた人生は、自分の社会的な存在価値を表してくれるような❝しっかりとした❞会社に就職して、20代で結婚し、30代で家族に恵まれ、子育てや家庭生活と仕事を両立させる、そのような「理想的」な生活。 しかしながら、現実は、「理想」とは程遠く、新卒者として臨んだ就職活動に❝失敗❞し、非正規社員として社会人をスタートし、学生時代からのパートナーと別れ、友人たちとも疎遠となり、20代後半から「孤立」し始め、30代はずっと「孤独」な生活を過ごすことに。 「孤独」の痛さや、孤独の中で毎日働く「虚しさ」を10年以上経験する。 40歳で「前向きに」生きることを決意し、カウンセラーの資格を活かし、自分と同じような「孤独」と「仕事」に不安と悩み、虚しさを抱えた方々に、ナラティブ・アプローチ(『語り』を通じた問題解決)を用いて、寄り添う活動を行っている。

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