学校を卒業して社会人の第一歩目は派遣社員=非正規社員から
ほんとうに運がなく「就職氷河期」に就職活動が当たってしまった私は30社以上採用試験に臨むものの「内定」は1社もえられずに、仕方なく派遣会社に「登録」し(今は派遣法が改正されルールが変更されています)、派遣社員として社会人をスタートさせました。
当然に正社員として社会人をスタートさせるものと思って疑わなかった私ですが、「就職氷河期」真っ只中の厳しさは、1990年代前半から2000年代前半に実際に就職活動を経験した同世代しか理解することは難しいと思います。
2000年から2010年頃までは「就職氷河期」の厳しさを身をもって経験している若手社員もいて、「あの頃の就職活動は大変でしたから『内定』を獲得できなくても仕方なかったですよね」と声を掛けてくれる正社員もおりましたが、
2015年頃には「就職氷河期」の頃の大変さの記憶も薄らぎ、「学生時代に怠けていてから『内定』を得られなかったのでは?」と私や同世代で非正規社員として社会人をスタートさせた「運のなかった」人々に対して、「自己責任論」で平然と陰口を言う人も現れました。
派遣社員=非正規社員として社会人をスタートさせ、「自己責任論」で苦しめられてきたことは、もう数えきれないほど。
今の新卒就活生の「売り手市場」で就職活動を経験した若者からすれば、私のように「内定」を一つも得られずに学校を卒業し、非正規社員として社会人をスタートさせる人は、「学生時代に努力しなかった人」か「就職先を高望みし過ぎた意識高い系の人」として映るのでしょう。
(実際に社内で若者がそう陰口を言っていることは私の耳にも入ってきたこともありました。)
「就職氷河期」世代の私としては、同世代で已むなく非正規社員として社会人をスタートさせ、20年以上の時を経た現在も非正規社員として働く人の❝名誉❞のためにも、
「就職氷河期」真っ只中の2000年3月卒の求人倍率は0.99倍と、就職先の絶対数が足りなかった時代であること、
そして「就職氷河期」が明けた2000年代後半からは、
求人倍率は2倍を超える年度があった程新卒者の「売り手市場」(新卒者にとってはとても就職しやすい環境)が続いていること、
を記しておきたいと思います。
「就職氷河期」と呼ばれる10年程度は、日本全体で構造的な「リストラクチャリング」=再構築を進めていた時期で、新卒者を採用する余裕が日本の多くの企業でなかった時代でした。
そんな訳で、私も正社員になりそこね、已むなく派遣社員になったのです。
派遣社員の私はずっと「仕事」によって時間給が決まる「職務給」だった。
2000年代前半の派遣社員の私の給与は「時間給」で決まっていました。
ざっくり手取りの時間給は1,200円。
時間給1,200円×8時間×22日間の勤務で、
約211,200円が私の1ヵ月の給与でした。
派遣社員の私は基本的には残業がありませんでした。
私が残業することで派遣先の企業=私が働く会社が、派遣元=私が給与をもらう会社に支払う人件費が増えてしまうことから、ほとんど残業をお願いされることはありませんでした。
残業をほとんどしませんでしたので、残業代もほとんどありません。
そして、ボーナス・賞与も派遣社員の私にはありませんでした。
ざっくり私の通帳に振り込まれる給与は1ヵ月211,200円でずっと変わりません。
211,200円×12か月=2,534,400円がおおよそ私の年収でした。
2000年代前半の派遣社員の私の実話です。
派遣社員の私の給与は時間給1,200円でした。
正社員のように昇給もボーナス・賞与もありません。
時間給1,200円は社会人をスタートさせ、1年後も2年後も5年後もほぼ変化はありませんでした。
(つまり時間給は何年勤務しても上がりませんでした。)
時間給は何年働いても上がりませんでしたが、
一方で、私に与えられた「仕事」にも変化はありませんでした。
派遣社員として社会人をスタートさせた私ですが、
私に与えられた仕事は、私と同じように派遣されていた方とほぼ同じ仕事で、様々なデータの入力でした。
朝から夕方までひたすら様々な部署から上がってくる各種データを、定められたルールの下で入力する、これが私に割り当てられた仕事でした。
はじめの1ヵ月はルールを理解すること、要領良くデータを入力すること、などに苦労しましたが、慣れてしまえば「流れ作業」のようです。
正直「誰でも」できる仕事ですが、「誰かが」やらなければならない仕事でした。
「誰か」の一人が派遣社員の私でした。
私に与えられた仕事は、細かなルール変更はあったものの、基本的な内容は派遣され始めてから何年も変わることはありませんでした。
そして、時間給も何年も変わることはありませんでした。
私はデータ入力という「職務」に対して、給与水準が決まっている「職務給」の世界でずっと働いてきたことになります。
仕事内容が変わらなければ、
より難しい仕事内容にチャレンジしなければ、
給与は変わらない、
これが「職務給」の世界なのでしょう。
私はずっとこの世界観で生きてきました。
仕事内容が変わらなければ、給与は変わらない、それがあたり前の世界だったのでは…。
最近「賃金が上がらない日本」と騒がれているようです。
調査によれば、
2000年の年間給与平均は408万円、そして、
2020年の年間給与平均は370万円、になったようです。
「上がらない」どころか、働く人の平均で見ると給与水準は減少しているようです。
割り当てられた仕事を毎日変わらず「こなし」てきた私にとっては、
同じ仕事をし続ける以上は、同じ給与、ということは「あたり前」の世界観です。
むしろ派遣されている会社の正社員の若者が、
仕事内容が変わらないにも関わらず、毎年昇給している現実に理不尽さを感じることもありました。
正社員であれば、夏と冬にもらえるボーナス・賞与についても羨望の眼差しでチラ見することもありました。
ですが、どんなに私と異なる境遇の人を羨望の眼差しで見たところで、
私の現実は変わりませんので、
私は私の理想の生活と仕事を見出すことに注力することにしたのです。
何十年も同じような仕事をして、同じような給与をもらう。
このような世界で、いかに私らしく、私なりの幸せを見つけることが、
私の人生にとって意義深いミッションだと思うのです。
【文中の参考・引用文献】
・株式会社リクルート「第39回ワークス大卒求人倍率調査(2023卒)」(2022年)
・国税庁「民間給与実態調査結果」